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大阪高等裁判所 昭和58年(ネ)252号・昭58年(ネ)264号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【判旨】

第二そこで第一取引の第二次予備的請求について考えるに、当裁判所も本件一連の取引に民法五三六条二項の法意を準用して第一審被告は本件商品の製造(作り過ぎ)に関し第一審原告の蒙つた損害を賠償する責任があると認定判断するものであつて、その理由は次に附加するほか原判決理由説示と同じであるから原判決中当該部分(原判決一六枚目裏七行目から一八枚目表三行目まで)《参考・第一審判決理由抄》を引用する。

一第一審被告は右の第二次予備的請求を争い第一審原告の見込違いによる本件商品の作り過ぎにつき民法五三六条二項の法意を準用して第一審被告に賠償責任を認める余地はないと主張し、先ず本件商品以前にも内示数と注文数の不一致はあつたとして乙第四号証を例示するが、当審における第一審原告代表者本人の供述によつて同号証記載の金五四八万円余は前年度の作り過ぎ製品分の代金であることは認められるものの右金員分の製品か前年度のどの期間に作られたものか、また右の作り過ぎ分の納入数に占める比率がどれ位になるのか等の事情が明らかでないのみならず、<証拠>によれば第一審原告は第一審被告との取引では製作数につき五%から一〇%の誤差は見越しているというのであるから、乙第四号証に例示されるような作り過ぎの例があるからといつて本件商品製造に先立つ隆吉<編注・第一審被告の実質上の代表者>の三種類一〇五万個との内示の責任が免責されるものではなく、この点を論拠にする第一審被告の当審主張は採用し難い。

二第一審被告は次に、昭和五二年三月卓上型の製造を打切りその頃卓上型のガラスビンを製作していた北田硝子に通告すると共に第一審原告にもその旨を通知したからそれ以後の第一審原告の本件商品の製造(作り過ぎ)につき第一審被告が責任を負ういわれはないと主張するが、その頃第一審原告に右の打切を通知したことを証する的確な証拠はなく、前出の仲川証言によると北田硝子は第一審被告と同一場所に所在する一体の会社であることが認められるから、両者の一体性からみて北田硝子に通知したといつても第一審被告内部の商品の製作中止決定と択ぶ所はないと考えられるのでそのことから、その頃右の打切を第一審原告に通告したと推認することもできないので、この点の事実誤認を前提とする第一審原告の所論も採用し難い。

第三そこで進んで第一審原告の蒙つた損害額について考えるに、第一審原告は右損害額は本件商品の正規の売買価格の八五%と主張し第一審原告代表者本人は第二回本人尋問において右商品の第一審原告の純益は一五%であつたと右主張に副う供述をしているが、この場合の第一審原告の損害は本件卓上型ポット部品たる本件商品の製造に直接投下された製造原価と解すべきところ(この点右のような狭義の製造原価に限定すべきではないとの第一審原告の主張は採りえない。)、右供述にいう一五%はいわゆるマージンと考えられるのでこれを直ちに右狭義の製造原価と認めることは困難であるが、第一審原告は当審において一般経常費、人件費等を考慮しても右狭義の製造原価は七五%であると供述しており同供述を排斥する理由も見出し難いのでこれに従つて計算すると同原価は本件商品の予定売買価格(当事者間に争いのないものと認められる。)金一六八四万三〇三六円の七五%に当る一二六三万二二七七円となるが、第二次予備的請求は結局のところ損害賠償請求と考えられ且つ第一審被告は同請求を第一審原告が慢然と作り過ぎたことも一つの理由として争つているので、過失相殺を主張していると解せられないでもないから第一審原告の過失の有無を考えるに、引用の原判決説示の各事情、すなわち第一審原告側においても通常ならば三月頃には内示される予定の確定数の把握に積極的に努めた形跡が認められないこと、更に六月に本件商品の本体をなすガラスビンの入荷が停止された後にも慢然と「蓋」の製造を継続していたこと等、右損害の発生を防止する上での注意に欠けるものがあつたと認められる点(第一審原告代表者の当審供述中、これに反する部分は採用し難い。)に第一審原告にも三〇%の過失があつたと認められるので、これを相殺すると第一審被告の賠償すべき額は前記損害額の七〇%に当る金八八四万二五九三円(円以下切捨)となり第一審原告の控訴のうちこの分は一部理由があることに帰する。

(今富滋 西池季彦 亀岡幹雄)

金型目録

(1) フリーザーポットキャップ一式二面(代金一七五万円)

(2) 卓上型フリーザー金型五面(代金五〇〇万円)

(3) ミニフリーザー金型、蓋およびキャップ二面(代金一五五万円)

(4) クッキングポット一面(代金一二〇万円)

《参考・第一審判決理由抄》

三ところで、<証拠>によれば、本件係争品は前認定のように被告が昭和五二年度に始めて製作販売しようとした卓上型ポットの部品であつて、右ポットの特有の型式に合せて作られ、他に流用することができない特製品であるため、原告はこれを前認定のように過剰生産してしまつたことにより、少くとも、その生産原価相当の損害を蒙つたことが認められる。しかして前記当事者間に争いのない事実ならびに前認定の事実によれば、原、被告間では昭和五〇年度の被告のポットの製造開始以来毎年その前年の一二月頃からその年の一月頃にかけて、原告より、その年のおおよその必要見込数を、三月頃にほぼ確定的な数量をそれぞれ内示し、具体的な注文は、その都度順次なされるものの、右後に具体的に行なわれる注文数と先の内示数とが非常に大きく喰い違うということがなく、二年度を経過した後、今回の卓上型の内示があつたことが認められるから、原告において、これについても、前二期分と同様、右内示数と実際注文数との間に大きな開きを生じないであろうことの期待を持つことは避け難いものとしなければならない。そして一般的にも、本件ポットのような特定の型式を有する商品の部品を、その特定の型式に合わせて製造して納入している下請業者が、取引の継続する過程において、それまでに前認定のようになされる内示数と実際注文数とに大きな差がなかつたことから、新たな製品についても、その内示数と実際注文数との間に大きな差がないとの期待を持ち得る場合において、右下請業者が、その内示数に合わせた製造計画をたて、これを遂行することはたやすく予想されるところであるから、右下請業者がそのように内示数に合わせて製造した場合において、実際注文数が内示数を著しく下廻つたことにより、右下請業者に損害が生じた場合には、右損失を右下請業者の見込違いとしてこれに負担せしめるのは相当でなく、かえつて民法五三六条二項の法意を準用して、内示数どおりの注文を達し得なかつた親企業者(注文者)にこれに負担せしめるのを相当と考える。原告の第一請求の第二次予備的請求に関する主張はこの見地において理由がある。

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